生産者の思いは一つ。
「組合員の皆さんに『おいしい』と言ってもらえるさつまいもを育てたい」
取材した多古町旬の味産直センターでは、「べにはるか」を独自ブランド「あまゆう」として育て、お届けしています。
しっとりとした食感と、スイーツのような甘さで人気の「べにはるか」を召し上がったことはありますか?
「産直 さつまいも(べにはるか)」の産地の一つ、農事組合法人 多古町旬の味産直センター(千葉県香取郡)さつまいも部会のメンバーは14人。2010年、べにはるかを「あまゆう」の名前で商標登録し、7人の生産者が生産しています。その中の高橋秀明さんと玉井春樹さんに話を聞きました。訪れた11月は収穫でもっとも忙しい時期でした。
「べにはるかは、掘ったばかりのときはホクホクとした食感なのですが、貯蔵庫で60日以上の熟成期間をへることで肉質が変化し、しっとり感があって甘さが強いさつまいもになります」と高橋さん。
2人は貯蔵施設を持ち、訪れた玉井さんの畑は16ヘクタール(東京ドーム3個分)の広さ。大規模にさつまいもを栽培しています。苗はハウスで育て、露地の畑に植え替え、収穫まで育てます。
「『苗半作』という言葉があり、苗づくりはとても大事です。健康な苗が順調に畑に根付くとすくすくと育ってくれます。苗を育てるハウスでは、温度と水分をしっかり管理し、あと大事なのは天候です。苗を畑に植え替えるときは、苗が弱ってしまわないように気をつけています」と玉井さんは話します。
畑に植えてからは、大きな災害などがなければだいたい順調に育ちます。健全に育つための手助けとして農薬も使用しますが、人間が予防注射を打つのと同じように、病気などになる前に予防的に活用し、使用量を抑えています。
「9月頃に葉が枯れてくると、土の中でさつまいもができましたよという合図。収穫前には葉をすべて刈り、マルチ※を剥がしてから機械を使って収穫します」と玉井さんは話を続けます。
「去年よりもおいしいと言っていただけるさつまいもを毎年目指しています。オフシーズンにはさつまいも部会で勉強会を開いたり、収穫後には反省会もしています。皆プライドを持ってさつまいもづくりに励んでいます」と高橋さんは聞かせてくれました。 そして、最後におすすめの調理法を尋ねると、玉井さんは次のように教えてくれました。
「おいしく召し上がるには、1時間ほど蒸かすのがおすすめ。さつまいもの中のでんぷんが糖に変化して、甘さが最大限に引き出されます。できれば丸ごと鍋に入れてくださいね」
さつまいものおいしい季節です。召し上がる際には、ぜひ時間をかけて蒸かしてみてください。
さつまいもは、基本的に毎年同じ土で育ちますが、連作すると農作物に被害をもたらす小さな害虫・センチュウが増え、生育障害が起きて収穫量が減ってしまいます。それを回避するため、3年に1回、畑に他の植物を植え肥料として土壌に入れたまま耕す緑肥を行っています。
種となるさつまいもをハウスに植えて育てます。苗が育ったら畑できちんと根付くように、良いものを選んで切ります(写真A)。ちゃんと苗を選ぶことと、夕方や曇りの日などに作業をすることで、苗を弱らせないことが大事です。畑では土を耕し、肥料をまき、かまぼこ型の畝にして、マルチを張ってから苗を植えます。
露地の畑に植えたら、夏には濃い緑が美しい葉が畑一面にぎっしり(写真B)。9月に葉が枯れてきたら、収穫の合図です(C)。
マルチをひたすら手作業で剥がしていき(写真D)、「ポテカルゴ」という機械で収穫していきます(E)。収穫の時期は朝から晩まで収穫しています。さつまいもは寒さに弱いため、霜が降りる前にすべてを収穫します。玉井さんの畑は大規模なため、ベトナムから来た技能実習生も収穫をしていました(F)。芋をかごに入れるときに、大まかにサイズを選別しています(G)。
収穫後は土が付いたまま、温度は13~15度、90%の湿度に保った独自の貯蔵庫で熟成させます(写真H)。この熟成期間によって、べにはるか特有の甘さとしっとり感が生まれます。冬の冷たい空気にさらさないよう、入り口をビニールで覆って二重にするなど工夫しています。出荷は12月頃から6月頃までの間、出荷時にさつまいもを洗い、乾かします。
【広報誌2023年2月号より】