コープの産直牛、産地のひとつは北海道。
農場を訪ねると、広い農場で1頭1頭をしっかり見ながら育てている生産者がいました。
コープの産直牛、産地のひとつ北海道十勝地方。JA鹿追町の生産者のひとり、農事組合法人 笹川北斗農場(河東郡鹿追町)の矢萩和幸さんに話を聞きました。
広さ10ヘクタールの農場に、大きな牛舎がゆったりと並んでいます。この地域は夏も比較的涼しく、冬も北海道の中では雪が少ないほうだといいます。
矢萩さんは、コープの「産直牛」として流通するホルスタイン種の牛3000頭を、従業員7人とともに育てています。ホルスタイン種は、黒毛和種などと比べて、赤身が主体の品種です。
牛は、町内の酪農家の元で生まれた雄。生まれも育ちも鹿追町です。「とかち鹿追牛」の名で地域ブランド牛としても流通しています。農場へ来るときは生後10日で約50キロ、出荷時の18カ月後には約800キロにまで育ちます。
「牛を育てるうえで大事なのは、最初の3カ月どれだけ見られるかです。生まれたばかりでやって来ますから、無菌状態で弱い。菌にとにかく気をつけています。下痢と肺炎を起こさないように、哺乳舎では一日中牛舎に張りついて見ています」と語る矢萩さん。
牛舎は、哺乳舎・哺育舎・育成舎・肥育舎と月齢で変化していきますが、生後3カ月までの牛が過ごす場所が哺乳舎と哺育舎です。「3カ月過ぎれば、そんなに心配ないよ」と笑顔で続けます。
矢萩さんは“楽しく仕事をすること”を大事にしているといいます。
「私一人では当然3,000頭を育てられるはずがありません。だから牛を育てる前に、安心して牛を任せられる人を育てる方が大事。自分の完璧を求めず、ある程度任せて、でも私が思っていることはきちんと伝わっていることを目指しています。自分が家族経営の中で育ったので、家族じゃなくてもそんな風に雑談しながら仕事をする。宮崎県、千葉県、東京都から来てくれたスタッフもいます。朝は5時半から仕事です。冬なんてマイナス20度くらいになるからね、そこは慣れていないと大変かな。ここで働いて良かったと思って仕事をしてもらえたらいいよね」と人を大事にすることへの思いを聞かせてくれました。
そして、育てている牛の品質をこう語ります。
「肉の味は脂で決まります。15年前にこめ油を入れた鹿追だけの餌を作ってもらい、それから脂の質がとても良くなりました。毎日肉を切っているお店の人に『切るときに脂の手触りが変わった』と言われ、食べた方からも『脂身が甘くおいしくなった』と言われるようになりました。うれしかったですね」
矢萩さんは食べ方について「脂に甘みがあるから野菜炒めなどがおすすめですよ!」とのこと。シーンに合わせて、産直牛をご活用ください。
矢萩さんの農場は、すべての牛が一斉に入ってきて18カ月後に出ていく「オールインオールアウト」方式です。
40頭で1部屋の哺乳舎は8部屋。
生後1カ月間は、代用乳を哺乳ロボットで飲ませます。センサーがついていて、どの牛がどのくらいの量、どのくらいのスピードでミルクを飲んでいるかすべて記録しています。同じ牛がやって来ても4時間経たないとミルクは出ない仕組みで、飲みすぎを防止。
肺炎と下痢が大敵なので、牛の様子をスタッフが頻繁に見ています。
生後1カ月で除角(牛と人の安全のために角を焼く)をします。
成長とともにミルクの量を減らして餌に移行していきます。
2~3カ月目までを過ごす哺育舎もだいたい40頭ずつ。哺乳舎以外の牛舎は1日に3~4回牛の様子を見て回っています。
風邪が悪化すると肺炎になるので、未然に防ぐために呼吸が少し早い牛がいたら治療します。
体の小さい牛は、他の牛に負けてしまって餌を食べるのをあきらめてしまうので、そういう牛がいたら別の牛舎に移して餌を食べられるようにしています。
生後3カ月で去勢します。背中のマーカーは去勢が済んだ牛という印です
牛の成長に合わせて牛舎も大きくなっていきます。
8カ月までを過ごす育成舎でも引き続き餌の食い負け(他の牛に負けて餌が食べられない)の牛がいないか、足のけがは致命傷になりかねないので、足をけがしている牛はいないかを確認しています。
18カ月の出荷までを過ごす肥育舎。
朝夕に与えるオリジナルの餌は、コーン・牧草・麦・こめ油をブレンドしたものです。成長過程に合わせて餌も牧草も各3種類、変化していきます。
【広報誌2023年12月号より】